両者を合わせると76.6%の人が、親子が互いに気にしながらも基本的には別居を望んでいると言える(図2−1−6)。 このように、家族に対する意識は変化しており、今後もこうした傾向は進むものと考えられる。 図2−1−6 親と子の同居について
資料:1990年「高齢化社会に関する市民意識調査」(北九州市民生局) 注:調査対象は、20歳以上70歳未満の北九州市民。
(3)地域社会の変化 家族機能の低下によって、家族だけでは果たし得なくなった育児や介護を社会が支援することが今日の福祉社会のあり方となり、その役割が地域社会に望まれるところとなるが、期待される地域社会がそうした期待とは逆に大きく変化している。特に大都市部における地域社会の変容は著しい。市街地では商家などの職住分離が進み、住民は郊外に流出し、郊外においては、地域と関わる時間の少ないサラリーマン層が増加するなど地域住民の再編が進行しており、かつて伝統的な互助システムや人間関係を持っていた地域社会の役割や機能が現時点では総体的に弱体化している。 こうした地域社会における人間関係の低下は全国的現象で、「高齢者の生活と意識に関する国際比較調査」(総務庁1996年)によると、「週に何回ぐらい、近所の人たちと親しく話をするか」という問いに対しては、「ほとんどない」が27.0%で最も多く、次いで「週に1回」が26.2%となっており、日中の在宅が多い高齢者でも隣近所とのつきあいは希薄になっている(図2−1−7)。 しかし、一方で、地域社会とのかかわりを求める意識も顕在している。同調査では、「教育・文化、スポーツ、社会奉仕など、社会とのかかわりを持って生活したいか」との問いに対して、「そう思う」が37.3%で、「どちらかといえばそう思う」は34.8%と、合わせて72.1%の者が肯定的な答えをしている(図2−1−8)。高齢者はその身体機能の低下などから行動範囲が限定されがちなためか、身近な地域社会での新しい交流を求めていると言えよう。このことは新しい地域社会(コミュニティー)の創造に繋がることが想像される。
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